2008 Summer Greece vol.5 遺跡調査
前回遺跡の概要を書いたが
では、自分達が行った遺跡調査とはどのようなものだったのか
遺跡といえば、発掘調査を思い浮かべる人も多いかと思うが
日本人がギリシアで発掘をするのはなかなか難しいらしく
自分達は、既にこのようにギリシア隊によって発掘された劇場の石材を実測していく
まず、教授達によって復元する為に重要と思われる部材が選び出され
それが各メンバーに割当られる
そして自分が実測する石材が決まったら
その石材を書きやすい場所に移動してもらう
遺跡には常駐?の人夫がおり、てこや人力で石を移動させてくれる
普通の人がやるととても持ち上げれる重さではなく、また怪我の原因ともなるので
自分勝手に移動させることはできない
人でも動かせないようなものは重機を使って
そして、L型の定規を何個の組み合わせ、基準となる面から水平・垂直を保ち
石材の凹凸を測っていく
自分が担当していた石材のひとつがこれ
ちなみに部材としてはアーキトレーブという梁の部分
これを、朝から晩まで延々と計測する
このように図面化していくのだが
この石で、測るのにかかった時間は約1週間
調査は朝6時半から夜8時まで途中昼食とシエスタ(昼寝)を3時間挟むので
実働約10時間×5日間
この石ひとつを計測するのに50時間!?
2ヶ月いても5〜6個くらいの石材しか測れない
そんな途方もない作業
この図面をもとにダボ穴やクランプ(かすがい)の位置を正確に押さえ
他の部材との繋がりを考察していく
当然なくなってしまっている部材も多くあるので
歴史的背景等を鑑みて復元案を作成していく
と調査の内容はこんな感じ
2008 Summer Greece vol.4 メッセネ遺跡
古代都市メッセネ遺跡について
“パウサニアスの「ギリシア記」によると、
メッセネの町は、テーベの英雄エパミノンダスがレウクトラの戦いで
スパルタを破った後、紀元前369年に建設されたとされる”
文献にはこのように書かれている
スパルタと言えば『300』という映画の舞台になっているので
聞いたことがある人もいるかもしれないが
メッセネ遺跡のことに付いて知っている日本人は皆無といってもいい
そんな場所で、2ヶ月間調査を行っていた
約2400年前ここメッセネには都市が築かれていた
日本ではまだ、狩りから稲作へと変わった頃か?
その頃、古代ギリシアでは、文明が成熟期を迎えていた
都市を敵から守る為に約9kmに渡り城壁が築かれ
内部には、神殿、神域、劇場、スタジアム、音楽堂、墓、住宅など
人々が生活する為の環境が整えられた
約9kmあったとされる城壁
城壁の途中にあるアルカディア門(城門)
現在もここが村の入り口となっている
城門で遊ぶ子どもたち
何故だか絵になる。。。
アスクレピオス神域
芝生の中心に基壇部だけ見えるのがアスクレピオス神殿
それを列柱の回廊が囲む様に建てられていた
これがその復元模型
2000以上も前にこんな建築が建っていたのかと感動し
鳥肌が立ったのを覚えている
神域の横に隣接している音楽堂
遺跡の建物を構成していた部材
中でもアーキトレーブ(梁)には動物や植物などを模した彫刻が施されていることが多い
次にスタジアムの入り口の門
でこれが、スタジアム
当時は、徒競走はトラックを回るのではなくここを直線に走っていたそうだ
横を見るとこんな感じ
ここにも列柱がまわっている
最後にこれが調査対象のローマ式劇場
調査当時は荒れ果てて劇場の面影もあまりなかったが
現在は修復されて↓↓こんな感じになっているらしい
自分達がやったことが少しは役に立っているようで良かった
その劇場の中でも今回の調査の対象は
スカエナエフロンスと呼ばれる舞台背景の部分
全くどんなものがあったのか想像がつかないと思うが、、、
現存する劇場で一番残りがいいのはこんな感じ
あの荒れ果てた舞台の上にこんなものがあったのではないかと想像しながら
ひとつひとつの石の部材を計測し、復元案を作っていく
とまあ、聞けばロマンがあるような話だが、
ひとつひとつの石の計測は猛暑のなか地味でかなりつらいのだが
それは、また次回
2008 Summer Greece vol.3 アテネ→メッセネ
今回の渡航の目的は、古代遺跡の調査をすること
(調査メンバーの一員として参加)
というわけで、アテネを早々に後にし、ペロポネソス半島の南西に位置する
メッセネへ移動
ホテルで朝食をすませ、いざ出発
あまりの朝食のおいしさに後ろ髪を引かれる@エスペリアパレスホテル
メッセネへは車で約4時間程
アテネ市内を抜けると一気に田舎になりこんな景色が延々続く
140km/h程度で走るが周りの車の中ではかなり遅い方
ギリシアではスピード違反は滅多に取り締まっていないらしいが、
捕まると20〜30万程度高額な罰金となる
山にはオリーブの木が生えているが、背が低いため地面が見え一見ハゲ山
日本では見られない景色に感動しつつも
この光景が何時間も続く、、、、
途中道ばたにあったレストランで昼食
肉料理はより必要以上に肉肉しくおいしい
サラダは、トマトとオニオンとパプリカとオリーブとフェタ(山羊のチーズ)
にオリーブおいるをかけて食べる
ギリシアではどこにいっても全く同じサラダが出てくる(おそらく)
約4時間のドライブを終えようやく調査する遺跡がある村へと到着
150世帯くらいの村で全員が顔見知りというような小さなところ
日本からは毎年調査に行っていたので
日本人が来ても特に驚かれることもなく、むしろ歓迎ムード
約2ヶ月間滞在するホテル?ペンション?
ベッドとシャワー・トイレだけがあり食事は村の別の食堂でとる
余談だが、ギリシア語で食堂の事をタベルナという
食べる場所なのにタベルナ
しょうもないだじゃれに聞こえるが
日本人がギリシアに行ったときには鉄板ギャグになるらしい!?
室内はこんな感じ
漆喰の壁に木のサッシ、壁と天井の境にはモールディング
その場所にあるもので作っており、作為的なものは感じられないが心地よくかわいい
西洋人が自然にもっているセンス
ベランダからの眺めは、村と遺跡が一望できとても気持ちいい
さらに星も見えるという最高のロケーション
2008 Summer Greece vol.2 アテネ後編
前回に引き続きアテネについて
パルテノン神殿以外は何を見ていいかわからなかったので
何となく街を散策することに
想像よりは新しい建物があったものの旧市街は古い建物が並ぶ
ファサードは基本ヨーロッパ中世の建物の様な縦窓+モールディングで装飾
という様式が多いが、色使いがさすが地中海の都市といった感じで鮮やかなものが多い
道ばたにはごく自然に葡萄があり
道ばたにはごく自然に美人がいる
また観光地だけあって馬車や流しのアコーディオン弾きなど街中に
娯楽要素も多い
レストランで食事をしているとギターの流しが入って来て急に演奏を始める
なんてこともよくある
聞き入るとお金を要求されるので注意が必要
市内には至るところに遺跡が残っており、予期せず突如現れたりする
ちなみにこの遺跡はゼウス神殿
基壇部に人影(同研究室メンバーによるスケールバー)が見えるが
かなりスケールアウトしていることがわかる
元々神殿は人間の為ではなく神の為につくられているので
人間のスケール感とはかけ離れている
この神の為という部分が結構大事で
現代ではあり得ないクオリティ・規模・労力を可能にしている
またこの技術の為に数学や物理など学問が発展して来た背景がある
アテネを訪れたのは8月の上旬、気温は40度近く、湿度はほとんどないため
汗を全くかかないというよりはかいた瞬間に蒸発するので気づかない
その為、意識的に水分をとらないと気づかないうちに脱水症状になってしまう
写真の飲み物はフラッペというカフェオレを気持ち悪いくらい甘くしたようなもの
ギリシア人は好んで飲んでおりどこのカフェでも出しているが
あまりに甘すぎてこれが最初で最後となった
これはギロピタという日本ではトルコのケバブとしてなじみがあるもの
ギリシアとトルコは隣どうしなので文化も似た部分がある
このギロピタとコーラという組み合わせは安くて美味しいのでことある毎に食べていた
※乾燥気候なのでコーラが異常に美味しく感じる
夜になると店から道にテーブル・椅子が出され
街全体がレストランでありお祭り会場のような雰囲気になる
この道の使い方の多様性がヨーロッパの魅力のひとつであることは確かだ
夕食は研究室のメンバーと先生も揃い全員でレストランへ
料理は肉料理が多く日本人の味に合うものが多い
こんな感じでアテネの一日は終了
2008 Summer Greece vol.1 アテネ前編
2008年8月から9月までギリシアのメッセネという古代遺跡の調査に参加した
期間が2ヶ月あったということと、初めてのヨーロッパで興奮していた為か
写真がかなり多い
飛行機は、その年サービスが世界一に選ばれたタイ航空
機内では、フリーで飲めるアルコールと自席での映画&ゲームに興奮しあまり寝ずに
アテネに到着
アテネ国際空港からアテネ市内までは離れているので、電車で移動
車窓さえもかっこ良く見えた
アテネ市内に到着し
まずはホテルにチェックイン
エスペリアパレスホテルという四つ星ホテル、
学生では到底泊まることができないようなホテルだったが
調査なので科研費で泊まることができた
チェックイン後まず最初に向かったのが、
これは建築に関係ない人でもかなり知名度が高い
ギリシア神話の神を崇める神殿でアスクレピオスという丘の上に位置しており
アテネ市内ではいたるところから見ることができる
坂を登ること約30分程度だっただろうか
ようやく神域の入り口に到着
さすがのパルテノン神殿 観光客でごった返しており長蛇の列
やっとの思いで門をくぐり
そこでいきなりパルテノン神殿と対面
圧巻の美しさ
古代ギリシア人もパルテノンを綺麗に見せることにこだわっており
一番見せたい角度からアプローチしていくような動線となっている
また土台部分は若干むくらせており
人の目の錯覚を利用してより水平に見えるように設計されている
古代は神殿として使われていたパルテノン神殿も
中世は弾薬庫として使われており
その時に砲弾を受けて大部分が破損
なので現在でも常に復元作業が行われている
全部綺麗に復元されてしまうとそれはそれで魅力が失われてしまう気もするが
神域の中にはオデイオンと呼ばれる音楽堂や劇場も
当時から市民は音楽や劇を楽しんでおり文化もかなり進んでいたことがわかる
アテネについて一回で書ききろうと思ったが長くなってきたので
とりあえずここまで
西洋との出会い
学生時代初めて訪れたヨーロッパ、それがギリシアだった
漠然とヨーロッパに行ってみたいという気持ちだけはずっとあったが、
特別ギリシアに行きたいというわけではなかった
研究室で調査に行けるということで、当時はヨーロッパであればどこでもいい
そんな気持ちだった気がする
それでもはじめて触れる西洋は
街並、気候、食べ物、言葉、文化
どれもが今までと違い、体験したことないものばかりで
自分がいかに狭い世界のなかで生きてきたかということに気づかされた
そんな価値観を変えてくれたヨーロッパをそれ以来好きになり、
チャンスがある度に訪れてきた
ここでは、その旅の記録を中心に自分が今まで出会ってきたことを
綴っていこうと思う